第5回「フリッツ・ラング監督はなぜこの場面を描き、あの場面を描かなかったのか? それは登場人物のキャラクター造形や、俳優たちの演技にどのような影響を与えているのか?」

かつてアメリカ映画はなによりもまず「省略」の芸術であった。数年、ときには数十年にも及ぶ物語をほぼ一時間半から二時間の上映時間で語り尽くすために、アメリカ映画は厳密なまでに何を描き、何を描かずにおくかを重視した。だが、その「省略」の根幹にある原理とは何なのか。なぜあの監督はこの場面を描き、あの場面を描かなかったのか。それは登場人物の人物造形や、俳優たちの演技にどのような影響を与えることになったのか。フリッツ・ラングの『復讐は俺に任せろ』を参考に、映画における作劇、演出と演技の関係性を体感する。(塩田明彦)