アナクロニズムの会
関口良一、吉田広明

 一本の映画を作ることも、見ることも共に非クロノロジックな時間体験である。撮影された現在は編集を通じて散布される。イメージの知覚とその意義の了解の間にもズレは生じる。そもそも静止画の間に運動を知覚する、映画の原理=仮現運動も、「間=ズレ」があるからこそ生じる事態ではないか。また、複数の映画が作りだす映画史においても、事後的に捏造されたジャンル=フィルム・ノワールの存在に見られるように、過去が現在に、現在が過去に介入し合うことで、常に映画の歴史的総体は組み替えられている。かくのごとく映画(史)の本質である時間のズレの演じる働き=効果を肯定的なものとして、一つ一つの映画の、そして映画史の至る所に見出していこうとすること、これをアナクロニズムと呼びたいと思う。映画における過去、現在、未来をクロノロジーから解放する試み。時間の回路を積極的に短絡させ、鮮やかな火花を散らせよう