ベッケルの旗のもとに
蓮實重彦(映画批評家)

世界映画史でもっとも貴重な映画作家の一人でありながら、フランス本国でさえ、今日にいたるも、ジャック・ベッケルを無条件に擁護しつくした者は誰もいない。その生誕百年を期に、熱烈なベッケル主義者が、東京から世界へ、一人、また一人と拡がりだすことを目指して、このシンポジウムは持たれようとしている。いま、その最初の一人となる幸運に恵まれているあなたに、その機会を逸してよい理由など、もちろん何一つとして存在しない。