映画の土曜日 東京編 part.2:レナーテ・ザミ
渋谷哲也(ドイツ映画研究者)

レナーテ・ザミの映画は、文学への傾倒、奇を衒わず冷徹なカメラのまなざし、潜在する政治的洞察を特徴とする。モチーフやスタイルは彼女と同世代のストローブ=ユイレを彷彿とさせるが、彼女は全くオリジナルな作り手だ。映画愛好家でもなく、映画学校で学んだこともない。そんな彼女が自らの衝動に従って初めて映画を撮ったとき、すでに40歳だった。その後も一作ごとに新たな領域を開拓している。レナーテ・ザミは、いかなる党派性とも商業性とも無縁な孤高の映画作家だ。無名ながら驚嘆すべき才能の結実をようやく日本に紹介する機会を得た。これに勝る喜びはない。