クリス・フジワラ(映画批評家)

マルグリット・デュラスの映画は、愛について、独創的で無視することのできない定義を与える。そして、それは、ある情熱的な達観(a passionate detachment)に基づいている。
デュラスの映画の夢うつつな映像は、出来事や記憶から離れて、純粋な視覚と感情の領域を循環しているかのようだ。
マルグリット・デュラスは、『トラック』のなかで「誰も風には逆らえない」と言っている。風がたびたび吹き込み、作品に影響を及ぼすデュラスの映画は、それ自体、風に似ている。それは激しく、かつ優しい力であり、瞬く間に通り過ぎ、すべてを運び去り、そして、それは変化の連続に他ならない。