赤坂太輔(映画批評家)

2014年「アルゼンチン映画の秘宮」vol.5と2015年山形国際ドキュメンタリー映画祭で日本初紹介されたグスタボ・フォンタン。彼の傑作群を見聴きする時は、ほぼ自然環境音と映像から生み出されるコンビネーションとオフスクリーン・サウンドの自由闊達さにただ驚きつつ身を委せよう。フォンタン自身が影響されたと語るブレッソンやタルコフスキーから、エリセ、初期ソクーロフやキアロスタミら1980年代の作家たちが躊躇し、なお囚われていた頸木から解放され、実験映画の領域とも言える顕微鏡的な自然や事物不明な粒子やアウトオブフォーカスの画面までも楽々とくぐり抜けて、爽快さとともに「映画も遂にこんな遠くまで来てしまったのか」との感嘆にただ耽っていよう。