吉田広明(映画批評家)

『深夜の告白』や『飾窓の女』など、その後フィルム・ノワールの正典として評価される作品がアメリカで発表された44年に遅れること三年の47年、イギリスでも優れたノワールが一気に現れる。『ブライトン・ロック』、『十月の男』、『日曜日はいつも雨』、そして今回上映する『私は逃亡者』。当時「スピヴ・ムーヴィー(闇屋映画)」と呼ばれた(本作もその一本)ジャンルは、暗黒街を舞台とし、陰鬱な雰囲気、ハードでエッジの利いたスタイルによって、今見ればノワールと分類されうるものだ。キャロル・リードを遥にしのぐイギリス犯罪映画の本当の凄さを見よ。