吉田広明(映画批評家)

アメリカ・インディペンデントの生みの親として映画史上の存在でありながら、実際にその作品を見、語られることの少なかったモーリス・エンゲルとルース・オーキン夫妻。社会性を欠いているために、アメリカ・インディの大勢から外れ、忘れられていったのだが、彼らの残した三つの長編は、日常の中のささやかな輝きを捉えた珠玉のような作品である。こうした作品を見ると、映画史には一体どれほど埋もれた傑作があるものか、と思わずにいられない。こうした作品を(再)発見し、見続けること、これは我々観客の喜ばしき務めではないだろうか。