渋谷哲也(ドイツ映画研究者)

この映画を初めて観たのは3年前のドイツ滞在中でした。アルツハイマーの母を介護するドキュメンタリーだと知り、ベルリン映画祭の開催中にもかかわらず上映劇場に出かけました。100人弱の小さな劇場に観客は10人程度、でも映画が始まった途端にその面白さに釘付けでした。結局その年ベルリンで観た映画の中でダントツのお気に入り作となりました。昨今認知症を扱う映画は多くなってきましたが、テーマの重さゆえに生真面目さや深刻さがどうしても前面に出ます。その偏見を見事に跳び越えて軽やかに感動をもたらしてくれるのがこの映画です。本作を字幕付き上映する機会をずっと探してきました。このとっておきの一本でドイツ映画発掘シリーズの幕を明けたいと思います。