渋谷哲也(ドイツ映画研究者)

ドイツ映画発掘講座第2回は、今年のベルリン映画祭のレトロで上映された愛すべき中編映画を紹介したい。今まで知られなかったニュー・ジャーマン・シネマの本当の多彩さを明らかにしてくれるはずだ。1937年生まれのローランド・クリックは1960-70年代に映画愛溢れる無国籍な映画を作り続けた。だが1980年製作『クリスティーネ・F』の撮影直前に監督を降板させられ、90年代以降は映画を撮れず忘却されていた。しかし彼の映画を今見ると、まぎれもないニュー・シネマの王道だったことが分かる。上映時間1時間弱、主役は1人の男と1人の女、主題歌、苦い青春、『ジミー・オルフェウス』はヌーヴェルヴァーグとプログラムピクチャーの正統な後継者だ。