渋谷哲也(ドイツ映画研究者)

ローザ・フォン・ブラウンハイムはもちろんニュージャーマンシネマの重鎮の一人として改めて紹介する必要もないのだが、マイナー映画という名称は他ならぬ彼にこそふさわしいと思う。
彼の作品は常に社会への挑発と啓蒙活動の両輪を担ってきた。社会運動的な身振りがファスビンダーやシュレーターの映像中心志向と異なるのだが、ローザこそクィアの持つ政治性にもっとも自覚的であり、それをアジビラではなく映画の形式にすることができた稀有な才能なのだ。
今回の上映作は性的タブーに触れる過激さはあるのだが、従来のテーマである同性愛や異性装が入っていないのでどちらかというと一般向けかもしれない。ただし〈普通〉の映画では全くないのでご注意を。