転形期の日本映画
木全公彦(映画評論家)

日本映画の黄金時代である1950年代。戦前からの巨匠が自分のペースで自らの代表作となる傑作を発表する一方で、製作される映画の中心になったのは、未曾有の量産体制に支えられたプログラム・ピクチュアであった。どこの撮影所からも新しい作り手やスターがあまた誕生した。
50年代末を迎えると、新旧の世代が入り乱れた日本映画の黄金時代は急速に終焉し、代わって世界中で同時多発的に起きた変革の波が映画を大きく変えようとしていた。日本映画界からも蜜月の惰眠を打ち砕くかのように新しい世代が台頭する。 大映の増村保造と日活の中平康を先駆者として、松竹からはヌーヴェル・ヴァーグがセンセーショナルに登場し、一大旋風を巻き起こす。黒澤時代劇の衝撃を受けた東映京都からは凄惨な集団時代劇が安保に揺れる激動の時代を炙り出し、間隙を縫うように東映東京からはドキュメンタリー・タッチの刑事ドラマが量産された。太陽族映画で新しい時代の幕開けを告げた日活はますます好調の波に乗り、石原慎太郎の監督起用を契機に東宝からもシャープな感覚を持った新人たちが続々と登場する。独立プロとて例外ではない。こうして変革の波は大きなうねりを形成していく——。
映画は孤立した作品の総体ではない。そうした軛からの解放を目指し、映画史の中で、日本映画の転形期に何が起きたのか再検証されねばならない。