現代エジプトを代表する作家ユースフ・イドリース(1927〜91)の代表作の一つを、アラブ映画の女王と呼ばれるファーティヌ・ハマーマ(1931〜 )の主演で映画化した作品。今世紀半ばのエジプト北部のデルタ地方の農村を舞台に、自分の意思に反してハラームを犯してしまった女性の悲劇な運命を描いている。
ハラームとは、イスラーム的に言えば、人間の行為を5つに分類したうちの、神がもっとも忌み嫌う、人がしてはならない行為である。その中にはもちろん、殺人や窃盗が含まれるが、イスラームでは、姦通も含まれる。つまり正当な夫婦でない男女の性交は、神がもっとも忌み嫌う行為であり、刑罰の対象となる罪である。物語では、この姦通の罪を、自分の意思に反した、レイプという形で犯した貧しい百姓女が、罪の子を身ごもってもがき苦しむ。女には病身の夫と二人の子供がいる。この女は本当に「罪」を犯したのか、誰がその「罪」を裁けるのか、と問う作品である。