雷鳴の湾

Thunder Bay 1953年(102分)

監督/アンソニー・マン

プロデューサー/アーロン・ローゼンバーグ 脚本/ギル・ダウド ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影/ウィリアム・H・ダニエルズ 音楽/フランク・スキナー 編集/アーサー・ヒルトン

出演/ジェームズ・スチュワート ジョーン・ドール ギルバート・ローランド ダン・デュリエ アントニオ・モレノ

(あらすじ)
 1946年に海軍を除隊したスティーヴ・マーティンとジョニイ・ギャムビの2人は、もと石油採掘師だった。一文無しの彼らは、ルイジアナの沖で石油を掘ろうと、小さい港町ボート・フェリシティへやって来た。その町は、湾内のえび漁が唯一の生業である漁師町だったが、その年は不漁続きで寂れていた。スティーヴとジョニイは、まず老人の漁師ドミニク・リゴウの船を測量のため貸借りしようとした。ドミニクは喜んだが、彼の長女ステラは、2人が文無しの山師らしい、石油のためにえび漁が破滅させられると考えて、父に反対した。
 スティーヴがかねて連絡していた石油会社の社長カーミット・マクドナルドが部下のロウリングズと水上飛行機で到着した。スティーヴに沖合いの石油採掘を説かれた彼は、昔は同じ採掘しだったので、部下のとめるのも聞かず資金を出す約束をした。
 口がうまくて陽気なジョニィは、ステラの妹のフランチェスカの気持ちをたちまち惹いた上、町の酒場で、気の荒い漁師テッシュ・ボシアを手なづけて、その漁船を借り受けることに成功した。しかしスティーヴ等が実地検査のために、船からダイナマイトを投じ始めた時テッシュは怒った。えびが逃げるからだ。スティーヴと喧嘩して船から放り出された彼は、漁船を課さず、石油堀にあくまで反対することにした。
 その夜テッシュは漁師たちを集め、スティーヴたちを追放することにした。それを聞いたステラは、はじめはスティーヴを嫌いだったが、いつか彼の男らしさに惹かれていたので、彼の事務所へ行った。やがて漁師たちが大挙して押し掛けた。スティーヴは数本のダイナマイトに口火をつけ、皆を殺してしまうと脅したので、テッシュらは逃げ去ってしまった。ステラはますますスティーヴを好きになった。
 やがて石油櫓の資材、工作船、職工たちが到着し、そして沖合いに櫓が建設された。ある日台風警報が発せられた。ただ一人工作船にいるスティーヴのみを気遣ったステラは、父の船で乗り付け、彼に急を告げた。その時2人ははじめて口づけをした。海が荒れ、激浪が石油櫓のデッキを荒い始めた頃、テッシュと彼の運転手フィリップが密かに船を寄せた。フィリップは、ステラの妹フランチェスカを恋していたので、彼をジョニイに奪われた怨みと、石油掘りへの反感から櫓をダイナマイトで爆破しに来たのだ。それに気付いたスティーヴは激浪洗うデッキの上でフィリップと大格闘をし、ようやく点火されたダイナマイトを消した。その間にフィリップは海におり、スティーヴが救おうとしたが姿を没した。
 スティーヴは、ステラが来たのは、2人の漁師から自分の注意をそらすためだったと信じて、彼女を罵った。その翌朝嵐が静まった時ステラは寂しく町へ帰ったが、父のドミニクは、一夜をスティーヴの工作船で過ごした娘の行為を誤解して怒った。 その後ドリルはいよいよ深く掘り進んだ。それと共にジョニイとフランチェスカの中も深くなり、結婚の約束が出来た。そこである日彼は、スティーヴには内緒で持ち場を離れ、フランチェスカと結婚するために上陸した。
 その間に石油会社社長マクドナルドが工作船に来て、スティーヴや一同を集め、重役会がこれ以上資金を融通することを否決したことを告げた。職工たちは動揺し、職場を去ろうとした。その時突然石油櫓から海水が噴出した。海水が入ることは採掘工事を進める上の大損害だ。スティーヴはもちろん職工たちも必死に海水噴出を止めにかかった。マクドナルド社長もびしょ濡れになって働いた。その時スティーヴは当面の責任者であるジョニイが持ち場を離れていることを知って怒った。
 海水を止める応急処置は成功した。再び一同は集まって相談したが、職工たちはやはり採掘を止める決心だった。そこへのんき顔で戻ってきたジョニイを見たスティーヴは彼を殴り倒した。そして職工たちに、のるか反るか無給で自分と一緒に働かないかと言ったが、誰も応じる者はなかった。失望したスティーヴがその場を去ったときジョニイが皆に仕事を続けることを薦めた。職工たちも納得し、マクドナルドでさえ意気に感じて個人的に参加することになった。
 フランチェスカはジョニイとの新婚生活を工作船で過ごすために工作船へ来た。温厚な父ドミニク・リゴウも、先には長女のステラがスティーヴのために汚されたと信じていたし、今はフランチェスカが無断でジョニイと結婚したことを知って怒り、石油採掘に反対する漁民を扇動し、大挙して工作船を襲うことにした。それを聞いたステラは、テッシュににその旨をスティーヴに伝えるように頼んだ。
 漁師に先行したテッシュが工作船へ行った時、スティーヴは海水噴出と共に吹き上げられた車えびを示した。それは漁師が探しあぐねていた見事なえびだった。やがて多数の漁船に分乗した漁民たちは迫った。スティーブは工作船と櫓との間の橋を引き上げ、唯一人工作船で武器を持つ漁民に対した。そして石油櫓の付近がえびの宝庫であるし、石油が出れば町も潤うのだと説得した。漁民たちの気勢がそれたとたん、物凄い音と共に櫓から噴出したのは、待望の石油だった。恐れた漁民が走り去った後で、黒い油を頭から浴びながらスティーヴは喜びの叫びを上げた。
 石油屋と漁師との対決はとけた。ドミニクは、フランチェスカとジョニイの結婚を許した。ただステラばかりは、スティーヴの誤解が解けぬままに、町を去ろうとしたとき、後から車が追っかけて来た。運転台にはスティーヴの顔が微笑んでいた。