フランス映画傑作展 作品解説

リュミエールの惑星

リュミエールの惑星
(リュミエール28作品による世界旅行)

La Planette Lumière
(1995年、モノクロ、35㎜、25分)
製作:フランス外務省映画部
構成:ジャン=ピエール・ジャンコラス

1895年、パリで世界最初の映画上映を成功させたリュミエール兄弟は、この新しく驚異な体験を広めるために、翌年には世界各地に多くのキャメラマンを派遣した。彼らが行く先々で撮影した風光明媚で、異国情緒にあふれた1900年前後の映像を、当時の世界一周旅行として再構成した映画生誕百年記念作品。

裁かるゝジャンヌ

裁かるゝジャンヌ

La Passion de Jeanne d'Arc
(1928年、モノクロ、35㎜、80分)
監督:カール・テオドラ・ドライヤー
出演:ルネ・ファルコネッティ、アントナン・アルトー

古文書の裁判記録に基づき、ジャンヌ・ダルク裁判を映画化。デンマーク出身のドライヤーは、1920年代にフランス、ドイツ、ロシアを中心に展開された前衛映画芸術運動の精華を集大成した傑作を誕生させる。新開発されたフィルムにより、ノーメイクのヒロインの刻々の表情の変化が見事に捉えられている。

大いなる幻影

大いなる幻影

La Grande Illusion
(1937年、モノクロ、35㎜、117分)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
出演:ジャン・ギャバン、ピエール・フレネー、マルセル・ダリオ、エーリッヒ・フォン・シュトロハイム

監督自身の従軍経験が反映された反戦映画。第一次大戦中、フランス人将校がドイツ軍の捕虜収容所から脱走を企て、道中でドイツ人農婦と恋仲になる。国民意識より階級意識の方が人間同士の結びつきにおいては重要だというこの作品のテーマを、シュトロハイムをはじめとする出演陣が見事に体現している。

罪の天使たち

罪の天使たち

Les Anges du péché
(1943年、モノクロ、35㎜、96分)
監督:ロベール・ブレッソン
脚本:ロベール・ブレッソン、ジャン・ジロドゥ
撮影:フィリップ・アゴスティーニ
出演:ルネ・フォール、ジャニ―・フォルト、シルヴィー

ドイツ占領期に撮られたブレッソンの長編処女作。やがて独自の「シネマトグラフ」論を提唱する以前の作品で、スタジオ中心の撮影、プロの役者の起用など後年には排除する方法も使用。しかし、修道女と元女囚の交流を描く物語にはすでに「魂の救済」の主題が現れている。冒頭の犯罪活劇的演出にも注目。

天井桟敷の人々

天井桟敷の人々

Les enfants du Paradis
(1945年、モノクロ、35㎜、196分)
監督:マルセル・カルネ
脚本:ジャック・プレヴェール
出演:アルレッティ、ジャン=ルイ・バロー、マリア・カザレス

ドイツ占領期に撮影開始され、三年もの歳月をかけて完成された詩的レアリスムの掉尾を飾る大作で、パリ解放後に初上映された。19世紀に実在した人物をモデルに、詩人プレヴェールが創造したこのメロドラマのために、美術監督の亡命ユダヤ人トローネルは南仏ニースにパリの「犯罪大通り」を再現した。
ENFANTS DU PARADIS (LES) - (1945) © 1945 - PATHE RENN PRODUCTION

フレンチ・カンカン

フレンチ・カンカン

French Cancan
(1954年、カラー、35㎜、102分)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
出演:ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール、エディット・ピアフ

第二次大戦後、亡命生活から帰国したルノワールの第一作。19世紀末のパリを舞台にムーラン・ルージュ誕生の顚末をつづった音楽喜劇。ジャン・ギャバン、16年ぶりのルノワール作品。エディット・ピアフを始めとするシャンソン歌手のゲスト出演も見所。終盤のカンカンの場面での色彩の氾濫と躍動感が圧倒的。

パリところどころ

パリところどころ

Paris vu par...
(1965年、カラー、35㎜、97分)
製作:バルべ・シュローダー
監督:ジャン=ダニエル・ポレ、ジャン・ルーシュ、バーバラ・ウィルキンド、エリック・ロメール、ジャン=リュック・ゴダール、クロード・シャブロル

ヌーヴェル・ヴァーグを代表する六人の監督が、それぞれの観点からパリの街とそこに暮らす人々を瑞々しく描いたオムニバス映画。全編16ミリで撮影。特にルーシュの『北駅』は軽量カメラの機動性を活かした長回しのワンショットで撮られている。当時20代だった製作のシュローダーも後に映画作家となった。

べトナムから遠く離れて

べトナムから遠く離れて

Loin du Vietnam
(1968年、カラー、35㎜、117分)
制作者:クリス・マルケル
監督:アラン・レネ、ウィリアム・クライン、ヨリス・イヴェンス、アニェス・ヴァルダ、クロード・ルルーシュ、ジャン=リュック・ゴダール

13人の映画監督がベトナム戦争反対のメッセージを掲げ共同制作したオムニバス映画。クリス・マルケルが総編集を担当。フィクション、ニュース映画、エッセイなど様々な手法が使われている。特に注目されるのがゴダールのパート「カメラ・アイ」で、カメラを前に彼は自分とベトナムとの関係を考察する。

ママと娼婦

ママと娼婦

La Maman et la Putain
(1973年、モノクロ、35㎜、220分)
監督・脚本:ジャン・ユスターシュ
撮影:ピエール・ロム
出演:ジャン=ピエール・レオ、ベルナデット・ラフォン、フランソワーズ・ルブラン

五月革命の熱狂が過ぎ去った後の1970年代初めのパリ。年上の母性的な女(ママ)、誰とでも寝る若い看護婦(娼婦)、そして二人の間で揺れ動きながら無為の日々を送る青年。彼ら三人の奇妙な共同生活を描く。緻密に練られた台詞と微細な表情の変化を同時録音と長回しの固定ショットが繊細に捉える。

クリスからクリストへ

クリスからクリストへ

From Chris to Christo
(1985年、カラー、ビデオ、24分)
監督:クリス・マルケル

歴史的な建造物を白い布で梱包するプロジェクトで知られる芸術家クリストとジャン=クロードが1985年秋にパリで行った「ポン・ヌフ橋の梱包」が完成するまでを追ったマルケルの短編。キャメラは、様々な困難をクリアしながら進む創作風景ばかりでなく、「作品」とその周囲の移ろいをも正確に記録する。