アテネ・フランセシネマテーク 映画の授業 作品解説

辺田部落

辺田部落
Narita: Heta Village

1973年(146分)
監督:小川紳介
撮影:田村正毅

成田空港建設反対闘争を描く「三里塚」シリーズ第6作。農民たちの戦いを軸にした前作までと違い、彼らの村に腰を据えたキャメラはその日常を丹念に記録していく。しかしそこには青年行動隊リーダーの自死が暗い影を落とす。「ニッポン国古屋敷村」や「牧野村」シリーズへ移行する転換点となる作品。

映画作りとむらへの道

映画作りとむらへの道

1973年(54分)
監督:福田克彦
撮影:川上皓市

「三里塚」シリーズの第1作から第6作まで助監督をつとめた福田克彦による「辺田部落」制作時の貴重なドキュメント。この後、小川プロは三里塚を後にし山形へ移るが、福田はひとり三里塚に残り、自主制作を続けていく。長らく封印されていた本作は、完成後27年を経て、1999年に初公開された。

結婚哲学

結婚哲学
The Marriage Circle

1924年(88分)
監督:エルンスト・ルビッチ
出演:モンテ・ブルー アドルフ・マンジュー フローレンス・ヴィダー

チャップリンの「巴里の女性」に影響を受け、有閑階級の男女の五角関係を軽妙な筆致で描いたソフィスティケイテッド・コメディの傑作。「ロジタ」に続くこの渡米第二作においてルビッチは、洗練されたヴィジュアル・スタイルで性的関係を仄めかす、いわゆる「ルビッチ・タッチ」を早くも確立している。

ヒズ・ガール・フライデー

ヒズ・ガール・フライデー
His Girl Friday

1939年(92分)
監督:ハワード・ホークス
出演:ケイリー・グラント ロザリンド・ラッセル

新聞記者たちの特ダネ争奪戦を描いたベン・ヘクトの戯曲「フロント・ページ」の二度目の映画化。原作では男ふたりが主人公だったのを「男女の話にした方がいい」とのホークスの発案で、離婚したカップルが再婚するまでの物語に変更した。マシンガントークが炸裂するスクリューボール・コメディの傑作。

不知火海

不知火海

1975年(153分)
監督:土本典昭
撮影:大津幸四郎

土本のライフワークである「水俣」シリーズでは、大作「医学としての水俣病ー三部作ー」に続く作品で、ほぼ同時に撮影された。陽光にきらめく美しい不知火海をバックに、思春期に達した胎児性の女性患者が発する問いは見るものの胸に突き刺さる。有機水銀に犯された海への甦りの祈りが込められた作品。

原発切抜帳

原発切抜帳

1982年(45分)
監督:土本典昭
ナレーター:小沢昭一
音楽:高橋悠治と水牛楽団

原爆被爆国から原子力大国へと突き進む戦後日本の姿を、新聞記事の切り抜きを使い、小沢昭一の軽妙なナレーションとともに語る実験作。土本のフィルモグラフィではマイナーな短編ながら、産官学からなる原子力村の欺瞞を暴いた予見的な作品として、原発災害下の日本において近年改めて注目されている。

アレクサンドル・ネフスキー

アレクサンドル・ネフスキー
Александр Невский

1938年(108分)
監督:セルゲイ・ミハイロヴィチ・エイゼンシュテイン ドミトリー・ワシーリエフ 脚本:ピョートル・パヴレンコ セルゲイ・ミハイロヴィチ・エイゼンシュテイン 
撮影:エドゥアルド・ティッセ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

「全線」後、「ベージン高原」を含むいくつかの企画の流産を経て、9年ぶりに完成したエイゼンシュテイン初のトーキー映画。ドイツのチュートン騎士団の侵略からロシアを防衛した13世紀の英雄を描く。作曲家プロコフィエフを起用した「氷上の戦い」のシーンは「視聴覚の対位法」の実践として名高い。

提供=ロシア映画社

ロマノフ王朝の最期

ロマノフ王朝の最期
Агония

1981年(149分)
監督:エレム・クリモフ

帝政末期のロシア。第一次大戦の苦戦で社会不満は強まり、革命運動は勢いを増す。皇帝ニコライ2世の周辺に事態を打開する力はなく、皇后に取り入った怪僧ラスプーチンが権力を掌握してしまう。危機感を強めた若手貴族はラスプーチン暗殺を計画する。「炎628」で名高いクリモフのもう一つの代表作。

提供=ロシア映画社

栄光

栄光
What Price Glory?

1926年(123分)
監督:ラオール・ウォルシュ
出演:エドマンド・ロウ ヴィクター・マクラグレン

キング・ヴィダーの「ビッグ・パレード」に続いて、第一次大戦を扱った戦争映画。フランス戦線で村の宿屋の美しい娘をめぐっていがみ合うアメリカ海兵隊のふたりの勇者たちの友情をコミカルに描く。戦闘場面の撮影に協力したジョン・フォードによって、後に「栄光何するものぞ」としてリメイクされる。

道中の点検

道中の点検
Проверка на дорогах

1971年(97分)
監督:アレクセイ・ゲルマン
出演:ロラン・ブイコフ ウラジーミル・ザマンスキー

監督の父である作家ユーリの原作を映画化。第二次大戦中、独軍占領地域で活動するパルチザン部隊に、敵に寝返った過去を持つ男が現れた。疑惑の目を向けられる男に、敵の軍用列車奪取の命令が下る。当局により上映を禁止されたが、ソ連末期のゴルバチョフ政権下の情報公開の流れによって日の目を見た。