○ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
リヒャルト・ヴァーグナーのパトロンとしても知られるルートヴィヒII世をめぐる夢幻的な物語がドイツ史を照らし出す。既存の映画美学を否定する「未来の音楽としての映画」として制作された「ドイツ三部作」の第一作。
ヒトラーも熱烈な愛読者だったと言われるドイツの冒険小説家カール・マイの半生を描いた「ドイツ三部作」の第二作。主演のコイトナーは、40年代から50年代にかけてのドイツを代表する映画作家。ナチ時代のスター俳優も多数出演。
「ドイツ三部作」の掉尾を飾る最大の問題作。ヒトラーおよびドイツ史をめぐるさまざまな視覚的、音楽的、言語的要素のシュールレアリスティックな混合。スーザン・ソンタグから「20世紀最高の芸術作品かつ史上最高の映画」と激賞された。
○ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
R氏は妻と息子と静かに暮らしていた。しかしある晩、突然、彼は妻と妻の友人そして彼の子供を燭台で殴り殺し、自殺する。ありふれた日常生活が突如として惨劇へと転じていく様が、即興演技によって描かれる。
1968年の学生運動の挫折を受けてファスビンダーが制作した革命劇。15世紀に実在した民衆の先導者ハンス・ベームをモデルに、巡業と火刑への顛末を描く。15世紀のテクストと当時の政治的スローガンを共存させた野心的作品。
© WDR / RWFF
ドイツ出身でアメリカに渡り、ベトナムで兵隊となった殺し屋が、ミュンヘン警察からの依頼を冷徹に遂行していく。ソフト帽にトレンチコートの主人公が生きる銃と女の物語を、ファスビンダー作詞のロックをBGMに描く。
©RWFF
職場で上司を殺し、自殺したキュスタース氏の後に残された家族の受難を描く。反社会的破壊分子とみなされた夫の汚名を晴らそうとするキュスタース夫人の元に、マスコミ、共産党員、過激派等が接近してくる。
©RWFF
新任の建設局長フォン・ボームが、建設会社の経営者シュッケルトの愛人である娼婦ローラに心を奪われる。戦後ドイツの経済復興期を背景に、公私の利害が複雑に交錯した現代版『嘆きの天使』の物語。ローラと二人の男の三角関係を描く。
© FILMVERLAG DER AUTOREN - RIALTO FILM – Rainer Werner Fassbinder Foundation
○アレクサンダー・クルーゲ
東ドイツから単身で西に渡った女性アニタの放浪の日々を、断片的なストーリーとフィクションと記録の融合で描く。時代の空気を伝える作風と象徴的なタイトルで、公開当時ドイツ映画の革新を実感させた。
ロスヴィータは三人の子どもと失業中の夫を養うために非合法の堕胎の仕事を行うが、徐々に社会意識に目覚めていく。私的行動と社会的行動のヴァリエーションとして、家族のために闘い続ける女の生き様を描く。完全版を新訳で東京初上映。
© Kairos-Film
治安維持に異常な情熱を燃やす刑事フェルディナントは、理想の組織を実現するために警察を辞職し、さる大企業への警備主任へと転職する。「守る側」が「攻める側」へと転じる論理を戯画的に描いた風刺喜劇。
歴史教師のガービは、ドイツ史の教材に疑問を抱き、今日もシャベルを手に「歴史」を掘り起こしに出かける。戦争映画やニュース映画、絵画、コミックなどの挿入が引き起こす映像の混乱に「歴史」が浮かび上がる。© ZDF
「感情」の力が巻き起こす創造的かつ破壊的な影響を描く、26の物語の断片から構成された映像のコラージュ。中心にはクルーゲが「感情の発電所」と呼ぶオペラが据えられ、記録映像、再現ドラマ、歴史的資料と組み合わされる。
1977 年のダイムラー・ベンツ社長シュライヤーの誘拐殺害とドイツ赤軍派リーダーの謎の獄死を契機に、クルーゲの呼びかけで制作されたオムニバス。赤軍派テロと社会不安の只中で、9 名の監督が戦後ドイツを問い直す。
© Pro-ject Filmproduktion im Filmverlag der Autoren