四方田犬彦presents
レバノンの女性映画監督:ジョスリーン・サアーブ

2017年2月17日(金)
会場:アテネ・フランセ文化センター

レバノンを代表する女性作家、ジョスリーン・サアーブ。1981年、フォルカー・シュレンドルフの助監督として、映画界でのキャリアをスタートさせた彼女は、劇映画やドキュメンタリーなど形式にとらわれずに映画を制作しつづけている。今まで日本では注目されていなかったこの女性監督の代表作『昔々、ベイルートで』を、映画研究者の四方田犬彦の解説とともに参考上映する。

ジョスリーン・サアーブは単にベイルートの厄難の定点観測ドキュメンタリー作家として重要であるばかりではない。彼女はアラブ地中海圏の伝統文化が西洋の高度消費社会によっていかに変容していくかを見つめる証人であり、イスラム圏での女性のジェンダー的困難に敏感に反応し、それをラディカルに問いかける映像作家でもある。また魔術と幻想、イスラム神秘主義に対しても深い共感を抱き、幻想的な物語世界を映画化している。シネフィルとして、レバノン映画史そのものを愉しいミュージカル映画に仕立て上げる才能も忘れてはならない。サアーブは近年にいたり映画の枠組みを越え、写真展とインスタレーション、映画学校での教育活動、さらに自伝の執筆に及ぶなど、幅広く活動している。
四方田犬彦(映画研究者)

■スケジュール

2月17日(金)

16:10 上映『昔々、ベイルートで』(104分)
18:00 解説(講師:四方田犬彦
19:00 上映『昔々、ベイルートで』(104分)

■上映作品

昔々、ベイルートで

昔々、ベイルートで
Kanya Ya Ma Kan, Beyrouth
1995年|104分|デジタル

監督:ジョスリーン・サアーブ
脚本:フィリペ・パランゴー ロナルド=ピエール・パランゴー ジョスリーン・サアーブ
撮影:ロビー・ブレイディ
出演:エミール・アッカー ミルナ・マーカロン ミシェル・タヤン

ヤスミンとレイラ、2人の少女がベイルートを散策していると、レバノン映画の密売をしている男に出会う。彼のコレクションでもあるレバノン映画の名場面を次々とスクリーンに投影し鑑賞するうちに、戦時下しか知らなかった少女らの眼前に過去のベイルートが映し出され、当時の景色や文化が蘇る。今は消滅したベイルートへのノスタルジアに満ちた作品。レバノンの映画100周年を記念し、レバノンのシネマテークから援助を受け制作された。


■監督情報

ジョスリーン・サアーブ

ジョスリーン・サアーブ
Jocelyne Saab

1948年レバノン生まれ。レバノンでの戦地レポーターを経て、1975年にTVドキュメンタリーを制作し、注目を集める。1981年、フォルカー・シュレンドルフがレバノンの戦地を舞台にした『偽造者』のセカンド・ユニットの監督を務める。翌年、イスラエル軍のレバノンへの侵攻を描いた『私の街、ベイルート』や、ベトナムのドキュメンタリー『サイゴンの淑女 ホア医師』を作るなど精力的に活動。1985年には、ベイルート中心部で撮影した初の劇映画『SUSPENDED LIFE』がカンヌ国際映画祭で上映された。1995年には映画誕生100年を記念し、レバノンのシネマテークから援助を受け、レバノンの映画史をたどる『昔々、ベイルートで』を監督する。2007年にはカメラマンとして活動を開始。世界中で展覧会を開催した。その後も、インスタレーションの展示や、学生への指導など活動は多岐にわたる。


■『昔々、ベイルートで』は日本語字幕なし(英語字幕付)、資料配布予定。
■入替なし

■料金
一般=1500円
学生/シニア=1300円
アテネ・フランセ文化センター会員=1000円

■会場・お問い合せ

アテネ・フランセ文化センター
千代田区神田駿河台2-11
アテネ・フランセ4F
JR 御茶ノ水・水道橋駅より徒歩7分
03-3291-4339(13:00-20:00)
infor@athenee.net

■主催
アテネ・フランセ文化センター

■協力
Jocelyne Saab