よみがえる台湾語映画の世界 作品解説

 ■記念上映と国際シンポジウム
 2021年10月2日[土] アテネ・フランセ文化センター

チマキ売り

チマキ売り
燒肉粽

1969年/89分/DCP
監督:辛奇
脚本:辛金傳(辛奇)
撮影:廖慶松
出演:陽明 金玫 金塗 戴佩珊

1949年に発表された人気の流行歌が映画のタイトルになり、映画の中でも父と娘が雨の夜にチマキを売り歩くシーンで挿入歌として使われている。ファミリー・メロドラマで涙を誘う場面が多いがコメディの要素もあり、冒頭におけるノワール的な場面に辛奇監督の力量がうかがえる。2019年に現代版リメイクも作られている。☆

 ■特集上映
 2021年10月15日[金]〜17日[日] 国立映画アーカイブ

モーレツ花嫁 気弱な婿さん

モーレツ花嫁 気弱な婿さん
三八新娘憨子婿

1967年/101分/DCP
監督:辛奇
脚本:陳小皮
撮影:陳忠信
出演:金玫 石軍 金塗 楊月帆

強い女性と弱い男性のカップルによる爆笑コメディ。美青年の家の外で群れる女性たち、結婚前の同棲を提案するヒロイン、そしてエンディングで結婚相手の家に嫁いで行く老父など、笑いの中にも伝統的な家父長制の秩序を転覆させるような設定もあって驚かされる。☆

地獄から来た花嫁

地獄から来た花嫁
地獄新娘

1965年/117分/DCP
監督:辛奇
脚本:張淵福
撮影:洪慶雲 林贊庭
出演:金玫 柯俊雄 柳青 歐威 戴佩珊

エリナー・ヒバートの小説『琥珀色の瞳の家庭教師』(Mistress of Mellyn) (1960)を映画化したもの。殺人事件や幽霊などミスティックな要素が満載のホラー映画だが、当時まだ7歳の子役だった戴佩珊の演技力も見どころの一つ。父親が映画プロデューサーだった彼女は4歳から映画に出演し、今回の上映作では4年後の『チマキ売り』で主役を演じている。☆

夫の秘密

夫の秘密
丈夫的秘密

1960年/100分/DCP
監督:林摶秋
脚本:陳舟 撮影:陳正芳
出演:張美瑤 張潘陽 吳麗芬

竹田敏彦の小説『涙の責任』(1939)と松竹の同名映画(1940)をベースにした作品。ヒロインを演じた張美瑤はのちに台湾と東宝の合作『香港の白い薔薇』(1965)にも出演した。公開当時はそれほどヒットしなかったが、2002年に香港映画評論学会が「華語映画ベスト200」の一本として選出し、再評価の機運が高まっている。☆

五月十三日 悲しき夜

五月十三日 悲しき夜
五月十三傷心夜

1965年/97分/DCP
監督:林搏秋
脚本:洪信德(劍龍) 林翼雲(林搏秋)
撮影:林鴻鐘
出演|張清清 陳雲卿 張潘陽

姉妹が同じ男性に恋心を抱くという常套的なストーリーだが完成度が高く大ヒットした作品。5月13日の大稲埕(台北の西部にある古い市街地)における祭りの盛況を映像に記録したことで知られるが、中盤では「反攻大陸」(大陸に反撃せよ)のセリフが出るなど、この時代の記録としても興味深い。☆

危険な青春

危険な青春
危険的青春

1969年/95分/DCP
監督:辛奇
脚本:辛金傳(辛奇) 張宏基
撮影:廖慶松
出演:石英 鄭小芬 高幸枝

風俗産業の実態や売春の斡旋など道徳が崩壊した社会の暗黒面を暴いた作品。青少年に対する教訓的メッセージをラストに出してはいるが、同時期の台湾で作られていたいわゆる「健康写実主義」の北京語映画とは正反対の趣になっている。のちに台湾ニューウェイブの侯孝賢監督とコンビを組むことになる編集の名手・廖慶松が本作と『チマキ売り』では撮影を担当している。☆

第6の容疑者

第6の容疑者
六個嫌疑犯

1965年/108分/DCP
監督:林搏秋
脚本:林翼雲(林搏秋)
撮影:陳正芳 簡栄添
出演:呉東如 張潘陽 夏琴心 田明

1965年に完成するも出来に不満足だった監督がフィルムを封印、90年にようやく初公開された作品。原作は南條範夫による推理小説『第六の容疑者』で、井上梅次監督による同名の日本映画(1960)がある。主人公が住むマンションのセットや軽快なジャズ音楽などが大都会のモダンな雰囲気を醸し出している。☆