トルコ人の父とドイツ人の母を持つ3兄弟の日常を描く。兄エロルは学業を中断して自堕落に生きていた。弟アハメドは高校に通いながらドイツになじんでいた。正反対の兄弟の葛藤を見ながら、妹レイラも日々に不満を抱えていた。そんな彼らの日常は、エロルがトルコ軍に徴兵されることになり、さらなる緊張を孕んでゆく。
ジャンはベルリンに住む麻薬の売人で、成り上る道を夢見ていた。恋人ジャーレとの間には幼い娘がおり、ジャーレはジャンに堅実な生き方を求める。また幼なじみのエルダルは警察官となって彼を必要につけ狙う。ある日ボスが路上で殺され、ジャンは決心してレストランの洗い場で働くことに。だがそんな生活は彼の性には合わず…。
21歳のデニスは、俳優の卵として映画の吹き替えの仕事をしている。『夏物語』(エリック・ロメール)の録音の後、彼女は恋人ヤンに別れを告げる。その後、彼女は晴れたベルリンの街を歩き、映画のオーディションを受け、愛について思いを巡らせる。「彼女は街の現実の地理関係に従って移動する」(アルスラン)
2005年から6月にかけてのトルコ横断のドキュメンタリー。ヨーロッパとの接点であるイスタンブールから出発し、首都のアンカラを経てイラン国境のドゥバヤジットへ。都市化された西部地域から紛争の続く東部へと、現在のトルコの断面図が描き出される。遥かドイツで生まれ育った監督が旅人として自らのルーツを見つめるロード・ムービー。
ベルリンの映画アカデミーで制作した、ベルリンの壁跡地のドキュメンタリー。『彼方より』と同時上映。
ベルリンの郊外ウッカーマルクの森に囲まれた閑静な家で、アンナは夫と息子と暮らしている。ある夏の日、アンナの家に前夫との娘、ラウラとその家族、次女ゾフィ、そして母親らが集い、バラバラだった家族の関係が見つめ直される。アンナを演じるのは、ニュー・ジャーマン・シネマの代表的女優アンゲラ・ヴィンクラー。
アルスラン初のジャンル映画。刑務所を出所したトロヤンは、かつての強盗仲間から仕事の分け前を得ようとし、失敗する。独立を守りたいトロヤンはドーラの手引きによって現金輸送車襲撃を計画するが…。「この物語では登場人物が絶えず移動しているが、それによってベルリンという街を見せる可能性が大きく広がった」(アルスラン)。
1898年夏のカナダ。エミリーたちは新聞広告の呼びかけに応じ、財産を投げ打って、新たに発見された北部ドーソンの金鉱へと向かう。その道程は地図も役に立たない過酷な荒野を、疲れた体に鞭打って進み続けるものだった。果たして彼らは黄金を見つけることができるのか-。実話を基にした西部劇。第63回ベルリン国際映画祭コンペ作品。
「主人公エミリーは映画冒頭で金鉱探しのグループに加わり、過去の人生から決定的な一歩を踏み出す。だが当初は単なる計画にすぎない。やがて旅の途上で厳しい身体的苦難を経験することで彼女の中に何かが起こり始める。そうやって初めて本当の経験が得られるのだ。映画館の中でもそれが起こるなら、映画そのものによって何かが経験できるなら最高だと思う。」
(トーマス・アルスラン 『黄金』ウェブページより)