ふるえて眠れ

Hush…Hush, Sweet Charlotte 1964年(134分)

監督/ロバート・アルドリッチ

脚本/ヘンリー・ファレス  ルーカス・ヘラー 撮影/ジョゼフ・F・パイロック 音楽/フランク・デ・ポル

出演/ベティ・ディビス(シャルロット) オリヴィア・デ・ハピランド(ミリアム) ジョセフ・コットン(ベイリス)

(あらすじ)
 1927年、ルイジアナ州。町の名士サム・ホリスの娘、シャーロットは、妻のいる男ジョン・メイフューの恋人だった。その日サムはジョンに、娘と別れるようにと脅していた。サムはジョンに彼の妻ジュールも、既に2人の仲を知っていると言い、翌日開かれるホリス家のパーティでシャーロットに別れ話を持ち出すよう命令した。パーティの晩、別れ話に泣き止まないシャーロットに、手をこまねいたジョンが庭で一人座っていると、何者かが寄ってきて、肉切り包丁で彼の手首と首を切断した。そして間もなく、パーティ会場にドレスを血で汚したシャーロットが、放心状態で入ってきたのだった。しかし死体は発見されず、事件は解決されないまま、シャーロットが殺したという噂だけが持ち上がり、37年の月日が流れた。
 父サムが殺したのだという確信を心に秘めたまま、シャーロットは屋敷で歳を重ねていた。そのサムもすでに他界して、彼女は世間から精神異常と噂されながら、メイドのヴェルマと2人きりで生活を送っていた。
 道路工事のため、屋敷が取り壊されることとなるが、シャーロットは頑としてこれを拒んでいた。死体が屋敷のどこかから発見され、父の犯罪が明るみになることを恐れているのだ。彼女は神経質になり、工事を阻止するための助けを求めて、いとこであるミリアムをヨーロッパから呼ぶ。ミリアムはかつてシャーロットの主治医ドリューの愛人だった。一方、昔ジョン殺しを捜査した新聞記者だという老人、ハリーがロンドンから町を訪れ、再び捜査に乗り出す。37年ぶりに帰郷したミリアム、そしてドリューとの晩餐の席上で、ミリアムは屋敷を退去すべきだと言い、シャーロットと対立する。ハリーは、ジョンの未亡人ジュールとミリアムの険悪なやりとりを偶然見てしまう。ジュールはミリアムをひどく嫌悪していたのだった。
 ある深夜、ジョンを想いながら広間のハープシコードを弾いていたシャーロットは、床に切られた手首が落ちているのを見て錯乱する。しかし翌日には、それは跡形もなく消えていた。
 シャーロットに好意的なハリーに、彼女は心を開いていく。
 ある嵐の晩、何者かが広間のハープシコードを弾いていた。起きてきたシャーロットは、広間のガラス越しにジョンの影を見て怯える。幻想とも現実ともつかぬ出来事に、シャーロットの神経は衰弱していった。そしてある日、ミリアムが手にした箱からジョンの首が転がるのを見て、シャーロットは失神する。しかし全てはミリアムとドリューが、シャーロットの財産目当てで企んだ策略であった。2人はシャーロットを精神異常に追いやろうとしていたのだ。それを嗅ぎ付けたメイドのヴェルマは、シャーロットのナイトテーブルから証拠となる薬品を見つけ、ショックと薬で衰弱しきったシャーロットを屋敷から連れ出そうとする。しかし、見張っていたミリアムは証拠を握られたことを知り、ヴェルマを椅子で殴り殺す。それはドリューとの共謀によって、事故死と片づけられた。
 再び、深夜のハープシコードを耳にしたシャーロットは階下へ行き、広間でミリアムの拳銃を見つける。そして首と手のないジョンの幻想を目にして、その体へ銃を放つ。降りてきたミリアムに声をかけられ、我に返るが、そこにはドリューの死体があった。シャーロットはドリューを殺してしまったことを知ると半狂乱となり、莫大な財産と引き替えてもいいと、ミリアムに死体遺棄の共犯を懇願する。2人は沼へその死体を棄てに行く。ミリアムは錯乱するシャーロットをぶち、これからは自分の言うとおりにするようにと、今まで見せなかったヒステリックな口調で命令する。屋敷に入ったシャーロットは、死んだはずのドリューが泥まみれになって立っているのを見て、完全に我を失う。しかしドリューは死んではいなかったのだ。これこそが2人の最後の切り札となる芝居だった。
 広間で勝利の杯に酔う2人。そこでミリアムは意外な事実を告げる。37年前のジョン殺しの真犯人は、嫉妬に駆られたジョンの妻ジュールだったのだ。しかもそれを目撃したミリアムは、彼女を脅迫しており、その金でヨーロッパ生活を送っていたのだと。シャーロットはこの話を2階の廊下から聞いていた。そして、シャーロットが立ち去ろうとした瞬間、石膏の大きなフラワーポットにぶつかり、事故とも故意ともつかぬまま、ミリアムとドリューは階下へ落ちたポットの下敷きとなり、即死する。
 シャーロットは屋敷を立ち去ることになる。ジュールは自殺し、真実を告げた彼女の手紙は、死後開封することを条件にハリーに託されていた。シャーロットが大勢の人に見守られ屋敷を去るとき、その手紙をハリーから受け取る。彼女にとって、新たな人生が始まろうとしていた。