のんき大将

El Gran Calavera 1949年(92分)

監督/ルイス・ブニュエル

製作/オスカル・ダンシゲルス フェルナンド・ソレール 
原作/アドルフォ・トラド 脚本/ラケル・アルコリサ(ジャネット・アルコリサ)
ルイス・アルコリサ 撮影/エセキエル・カラスコ 音楽/マヌエル・エスペロン

出演/フェルナンド・ソレール ロサリオ・グラナドス アンドレス・ソレール 
ルベン・ロホ

 酔っぱらいたちの足が絡み合う刑務所の中。常連の一人である百万長者のラミロ(フェルナンド・ソレール)は、最愛の妻を事故で失って以来、酒におぼれた生活を送っている。
 同居する兄と義姉は働く意欲がまったくなく、浪費家の息子は学校を途中で辞めてしまい、心優しい娘のビルヒニア(ロザリオ・グラナドス)には、ラミロの財産目当てで結婚をせまる恋人アルフレド(ルイス・アルコリサ)がいる。ラミロの経営する会社も、管理不十分のため下り坂の状態だ。
 そんなある日、ビルヒニアは、ラミロに結婚を認めてもらおうと婚約パーティーを企画する。しかし、そのパーティーの夜、またしても泥酔したラミロは、アルフレド親子にからみ醜態をさらしたうえ、突然倒れてしまう。彼の様態を心配した一族は、何とか彼に、今の生活を止めさせようと名案を思いつく。
 次の日、いつものように二日酔いで目覚めた彼は、ぼろ姿でベッドに寝ている自分に驚く。家族の話によれば、何年もの深い眠りの間に会社は倒産し、屋敷も財産も没収され、一文無しになったという。貧民街暮らしの身になり果てた家族の姿を見て、責任を感じたラミロは、遺書を残し、アパートから身を投げようとするが失敗する。だが、そのとき命を助けてくれた同じアパートの住人パブロ(ルベン・ロホ)の言葉から、意外な事実を見する。今日の日付は、彼が倒れたパーティーの日の翌日だったのだ。すべてが一家の芝居だと理解した彼は、激怒する代わりに、実は破産が事実であると嘘をついて家族に復讐する。
 芝居が現実になってしまったことに、最初は悲嘆にくれていた家族だったが、兄は大工仕事、義姉は裁縫と洗濯、息子は靴磨きと一生懸命働くようになる。ラミロも、すっかり人が変わり、敏腕社長となって会社経営に余念がない。
 そんなおり、父の命の恩人であるパブロとビルヒニアとの間にほのかな恋が芽生え始める。そこへ、アルフレドと彼の母親が突然アパートを訪れ、アルフレドが、たとえ一文無しでも、ビルヒニアへの愛は変わらないと告白したのだ。このかつての婚約者の態度に、すっかりラミロは感動し結婚を許してしまう。
 ある日、仕事をしていた兄が、ラミロと秘書の話を立ち聞きすると、経営状態は好調、財産も以前の二倍は下らないという。すべてを知った一族は、元の生活に戻れることに有頂天になる。しかし、好きだったビルヒニアとラミロ一家に裏切られたと知ったパブロは、その日以来寝こんでしまう。
 再び豪奢な生活にもどり、ビルヒニアとアルフレドの結婚式の準備が進められた。しかしすべてが順調だと思われた結婚式の当日、ラミロは使用人からアルフレドの意外な事実を聞かされる。彼はラミロの芝居をすべて見抜いていたのだという。激怒したラミロは、神父に結婚の異議を申し立て、愛娘をパブロの元へ走らせることに成功する。