愛する時と死する時

A Time to Love and A Time to Die 1958年(133分)

監督/ダグラス・サーク

プロデューサー/ロバート・アーサー 原作/エリッヒ・マリア・レマルク 脚本/オリン・ジャニングス  撮影/ラッセル・メティ 音楽/ミクロス・ローザ

出演/ジョン・ギャビン(アーネスト・グレイバー) リロ・パロヴァー(エリザベス・クルーザー) キーナン・ウィイン(ロイター伍長)

(あらすじ)
 1944年、ロシア戦線。ドイツ軍勢力は既に衰え始めていた。
 ドイツ兵士アーネスト・グレーバーは3週間の休暇を貰い、故郷へと帰って行く。しかしグレーバーの故郷はもう無かった。総てが爆撃され、廃墟と化していたのだ。グレーバーは両親の姿を捜したが、彼の育った家も同様に焼け落ちていた。わずかに残った扉に何らかのメッセージが残してあるか探してみるが、そこには何もなかった。そしてグレーバーは、主治医であったクルーザーの元へと急ぐが、彼は何らかの疑惑をかけられたがためにゲシュタポに連れ去られ、家には娘のエリザベス一人が、当局から派遣されたリーザ夫人の監視下におかれ、細々と生活していた。またエリザベスも、グレーバーの両親については何も知らなかった。
 その夜、陸軍病院に宿を求めたグレーバーは、仲良くなったロイター伍長から「わずか3週間の人生だ。楽しむことだ」と助言を受ける。翌日町を徘徊するグレーバーを、一人の男が呼び止めた。グレーバーの級友ビンディングであった。今ではナチス親衛隊の隊長となって、豪勢な生活を奥手いるためか、ビンディングはグレーバーを自宅に招き、闇市で仕入れた酒を振る舞う。何でも協力するというビンディングの“甘い”言葉に惑わされるが、エリザベスはそんなグレーバーを叱咤するのだった。2人の間には、恋心が芽生え始める。
 ロイター伍長の力を借りて、高級レストランへと繰り出す2人。しかし、しばしの楽しい時間も、空襲によって打ち砕かれてしまう。空襲の中、エリザベスの部屋へ逃げ帰った2人は、お互いに求め合い、結婚を誓い合うのだった。やがて、エリザベスの父クルーザーの無事も確認され、2人は晴れて結婚することになる。
 グレーバーは再び焼け落ちた両親宅へと足を運ぶ。そこで、疎開した母からの小包を受け取る。両親の無事を知り、喜びに満ちて帰宅したグレーバーであったが、リーザ夫人よりゲシュタポから、妻エリザベスへの出頭命令を受け取る。エリザベスに告げる事も出来ず、迷うグレーバーは人生の指針を求め、かつての恩師ポールマン教授を訪ねる。
 教授はビンディングの監視下におかれ、今では廃虚となった美術館に身を置いていた。しかしそこで、またもや爆撃が襲いかかる。
 今度の空襲で家を焼かれたグレーバーとエリザベスは、2人してポールマン教授の住む美術館に身を寄せる。改めて教授の元へ出向いたグレーバーに、ポールマン教授は「各々の人生については、各々が決断を下さなければならない」と告げる。意を決して妻の代わりにゲシュタポに出向いたグレーバー。果たして彼に渡されたものは、しがないシガレットケースに入った、クルーザー医師の遺骨であった。
 残りの休暇はあと3日となった。妻が偶然見つけた部屋を借りて、幸福な時を過ごすグレーバーとエリザベス。しかしグレーバーの休暇延長願いは、あっけなくはねつけられる。出発の時、エリザベスの見送りを受けて、グレーバーは早朝の汽車で戦地へと発つ。
 ドイツ軍の情勢はさらに悪化し、仲間が次々と倒れていく。ぼろぼろに疲れはてて要塞に戻ったグレーバーのもとに、エリザベスからの手紙が届いていた。あるロシア農民をゲリラ容疑で収容所に連行した後、グレーバーはその手紙の封を切る。そしてエリザベスが、2人の未来の子供を宿していることを知る。そこへ1人の兵士がやってくる。なんら証拠もなく、捕虜を射殺しようとする兵士に向かって、新しい生命の誕生の喜びを知ったグレーバーは、思わず銃を発砲し殺してしまう。捕虜を逃がし、再び手紙を手に取り立ち去ろうとするグレーバーに対して、非情にも捕虜が、今しがた死んだ兵士の銃を持って標準を定めていた。捕虜が発砲する。グレーバーは撃たれ、その場で果ててしまう。最後の力を振り絞り、水面を漂う手紙に手を伸ばそうとするが、ついに彼の手が届く前に、力尽きてしまうのだった。