夢去りぬ

The Girl in the Red Vervet Swing 1955年(109分)

監督/リチャード・フライシャー

出演/ジェームズ・スチュワート ダン・デュリエ

(あらすじ)
 1900年代のニューヨーク。高名な建築家スタンフォード・ホワイトは、妻とレストランで食事を楽しんでいた。その時3人の男たちが食事に訪れるが、マネージャーに満席といわれると、その内の一人の青年がいきなり狼藉を働く。その青年は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのピッツバーグの製鉄業者ソウ家の御曹司ハリー・K・ソウであった。その場は事態を見かねたスタンフォードの取りなしで事なきを得るが、2人の間に確執が生じる。
 モデルのエヴリンは、ブロードウェイのカジノ劇場で衣装作りの請負仕事をしている母親と細々と暮らしていたが、彼女の似顔絵が雑誌の表紙を飾ったことから、カジノ劇場の演出家に見いだされカジノ・フォーリィズとして舞台に立つようになった。全てに派手好きなハリーは、今日も舞台のはねた後、踊り子たちに山盛りのプレゼントを配って歩くが、そこで美しいエヴリンを見初める。
 ある夜エヴリンは、踊り子仲間のグエンに連れられて、表面上はおもちゃ屋で偽装したスタンフォードの、秘密の隠れ家で催されたパーティを訪れる。スタンフォードもまた、みずみずしい美しさに満ちたエヴリンに強く惹かれる。エヴリンがスタンフォードに促されて会場の部屋をのぞくと、そこには赤いヴェルヴェットのブランコが、ぽつんとぶら下がっていた。彼女はそこで、スタンフォードと口づけを交わす。
 エヴリンが海辺でモデルの仕事中に、ハリーが馬車を疾走させてやって来るや強引に交際を迫るが、彼女の心はスタンフォードに傾いていた。スタンフォードは、カジノ劇場のショウがはねた後、エヴリンを隠れ家に連れてゆく。エヴリンは赤いヴェルヴェットのブランコに乗る。ブランコを押すスタンフォード。次第に大きく揺れるブランコ、天まで届かんばかりに……。その夜2人は関係を持った。
 エヴリンが母親を伴ってコートを買いに訪れた店に、たまたま居合わせたハリーは、エヴリンに愛の証とばかりにミンクのコートをプレゼントする。最初は断ったエヴリンだったが、まんざら悪い気はいなかった。
 スタンフォードは、エヴリンのそうした無分別な行動を心配し母親を説得して、彼女を地方の女学校の寄宿舎に入れる。しかし奔放な彼女にとって寄宿舎生活は、苦痛以外のなにものでもなかった。彼女は、程なく心労のために病床に伏してしまう。悪夢にうなされるエヴリン。心身ともにズタズタとなった彼女のもとにハリーが訪れる。彼は健康を取り戻したエヴリンをヨーロッパ旅行に連れ出す。ハリーの強引な求婚を一度は断ったエヴリンだったが、寂しさからか遂に結婚を承諾する。ハリーとエヴリンの結婚を知ったスタンフォードはいたく失望する。
 最初は幸福そうに見えた2人の結婚生活だったが、やがてハリーはスタンフォードが今でもエヴリンにつきまとっていると邪推して嫉妬し、事あるごとにエヴリンをののしった。エヴリンの結婚生活は惨めだった。ハリーの嫉妬は、次第に病的に増大していった。
 ある夜、ハリーとエヴリンは友人たちとともに、マディスン・スクエア・ガーデンの屋上劇場にミュージカル・ショウを観に行く。しかし、そこにスタンフォードの姿を発見したハリーは、夢遊病者のようにスタンフォードの前に行くと顔色一つ変えずに、彼を撃ち殺した。
 裁判においては、ハリーの母親の必死の工作によりハリーが、強行の際に気が狂っていたという証言が成立した。ハリーは法律上は無罪となったが、精神病院送りとなる。さらに裁判では、エヴリンの過去も全てが暴かれた。果たしてソウ家には、エヴリンのいる余地はなくなった。ソウ家を離れた傷心のエヴリンは、兼ねてから誘いを受けていたヴォードヴィルの舞台に立つ。それは、「赤いヴェルヴェットのブランコの女」と題された出し物で、エヴリンは下品な洋服を着て、赤いヴェルヴェットのブランコに乗り、男性客の欲望に満ちた視線を一身に浴びるのであった。