「ドキュメンタリー映画史講座」番外編
柳澤壽男から佐藤真へ

2024年5月18日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター

2023年5月から2024年3月にかけて行われた映画美学校ドキュメンタリー・コース公開講座「ドキュメンタリー映画史―ドキュメンタリー映画を読む」の番外編。

 日本の戦後ドキュメンタリー映画の大きな流れは、全12回の講座で受講生と共に確かめてきたが、まだまだ触れられなかったことは多い。とりわけ柳澤壽男に関しては、第1回で、GHQ占領下の時代の『炭鉱』(1947)から『海に生きる』(1949)で、日本のドキュメンタリー表現を深化させ、1940年代のトップランナーであったことを観ていながら、その後の軌跡をフォローできなかったことに悔いが残っていた。今回、佐藤真の『阿賀に生きる』(1992)、『阿賀の記憶』(2004)で撮影を担われた小林茂さんに、柳澤晩年の福祉ドキュメンタリーの現場について語っていただけることになった。『夜明け前の子どもたち』(1968)に始まる5部作では、それを撮っていいのか、それを撮れる条件を持っているのか、という自問自答がドキュメンタリーの成立条件の限界に至っている。つまり、ドキュメンタリーが劇映画と異なるとすれば、撮る側の倫理が問われるということである。観る側でも、これを観ていいのかという、解決のつかない二律相反に陥った筈である。小林茂さんは、『そっやない、こっちや』(1982)では助手・スチール、柳澤最後の作品『風とゆききし』(1989)では助監督・スチールを務められていて、そうした柳澤の映画に対する姿勢を最も間近に見て来られた方である。それが、佐藤真が処女作のパートナーに小林茂を選んだ理由でもあるだろう。佐藤真にとっても、柳澤壽男は土本典昭、小川紳介と並ぶ最も影響を受けた先達であった筈だ。「柳澤壽男から佐藤真へ」という日本ドキュメンタリー映画史を再発見したい。

筒井武文(映画監督)

■上映スケジュール
※チケットは当日上映開始の30分前から販売します。

2024年5月18日(土)

14:00 『そっちやない、こっちや コミュニティケアへの道』(113分)
16:20 『阿賀に生きる』(115分)
18:30 講義
講師:筒井武文(映画監督)
ゲスト講師:小林茂(キャメラマン・映画監督)

■上映作品

そっちやない、こっちや
©️小林茂

そっちやない、こっちや
コミュニティケアへの道
1982年/113分/16mm
企画:伊藤方文
構成・監督:柳澤壽男
題字:沙羅千晴
撮影:塩瀬申幸
スチール:小林茂
録音:小林賢
解説:伊藤惣一
作詩:森永都子
作曲:冬木透

愛知県知多市の療育グループの記録。グループのメンバーや指導員たちが新しい共同作業所「ポパイノイエ」を造る様子などを克明に撮影し、障碍者にとってのコミュニティ・ケア=地域福祉とは何かを考える。

阿賀に生きる

阿賀に生きる
1992年/115分/16mm
監督:佐藤真
撮影:小林茂
スチール:村井勇
録音:鈴木彰二
撮影助手:山崎修
録音助手:石田芳英
助監督:熊倉克久
音楽:経麻朗
整音:久保田幸雄
録音助手:菊池信之

新潟水俣病の舞台ともなった阿賀野川流域に暮らす人々を、三年間にわたって撮影した。新潟水俣病という社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごとフィルムに感光したエンターテインメント・ドキュメンタリーの傑作。


■当日券のみ/先着順
■入替えなし

■聴講料:2000円

■お問い合わせ・会場

アテネ・フランセ文化センター
東京都千代田区神田駿河台2-11
アテネ・フランセ4F
JR 御茶ノ水・水道橋駅より徒歩7分
03-3291-4339(13:00-20:00)

■主催

映画美学校

■共催

アテネ・フランセ文化センター

■協力

カサマフィルム
太陽と緑の会
磯田充子
太秦株式会社