ダニエル・シュミット─思考する猫

2014年7月19日(土)-8月1日(金)(14日間)
会場:オーディトリウム渋谷

ダニエル・シュミット─思考する猫

ダニエル・シュミット─思考する猫

ダニエル・シュミット─思考する猫

「ダニエル・シュミット映画祭」第2弾。シュミット監督の人生に重要な役割を果たした人々へのインタビューと豊富な映像資料によって、彼の人生と映画の迷宮を描き出したドキュメンタリーをロードショーします。

出演者の紹介はこちら

■上映スケジュール

7月19日(土)

13:30 「ダニエル・シュミット─思考する猫」(83分)
15:20 トーク(入場自由):蓮實重彦(映画批評家)
17:10 「ダニエル・シュミット─思考する猫」
19:00 「ダニエル・シュミット─思考する猫」

7月20日(日)-8月1日(金)

13:30 「ダニエル・シュミット─思考する猫」
15:20 「ダニエル・シュミット─思考する猫」
17:10 「ダニエル・シュミット─思考する猫」
19:00 「ダニエル・シュミット─思考する猫」

■上映作品

ダニエル・シュミット—思考する猫

ダニエル・シュミット─思考する猫
Daniel Schmid─Le chat qui pense

2010(83分)
監督:パスカル・ホフマン+ベニー・ヤーベルク
出演:イングリット・カーフェン、ビュル・オジエ、ヴェルナー・シュレーター、レナート・ベルタ、蓮實重彦

シュミットの幻影から、日本のミニシアター・ブームは始まった。 彼の磁場に集まった人々、映画、そして時代の記憶。

ベルリン国際映画祭パノラマ部門 2010
ミュンヘン・ドキュメンタリー映画祭 2010
アムステルダム国際アートドキュメンタリー映画祭 2010
ペサロ国際ニューシネマ映画祭 2010

シュミット、記憶の万華鏡
西嶋憲生(映画批評家)

 ダニエル・シュミットは2006年夏に亡くなる何年か前、パスカル・ホフマンという若者と出会い、映画の勉強を勧めた。パスカルはチューリッヒ芸術大学(ZHdK)の入試でベニー・ヤーベルクと出会い、二人は大学で映画を作り始める。静寂のUKバンド、ダコタ・スイートを英国に訪ねインタビューした50分のドキュメンタリー『Wintersong』(05)は 風景ショットが秀逸で国際映画祭で上映後、新作CDの同包DVDに収録された*。二人は大学院の修了制作としてシュミットのドキュメンタリーに彼とともに取りかかるが、一度乗り越えたガンが今回は悪化し命を奪う。その後数年かけて二人が完成した本作は、イメージが連鎖し反射する記憶の万華鏡のようで『人生の幻影』を想わせる映画となった。『人生の幻影』(『悲しみは空の彼方に』仏題)は、スイスに隠棲したダグラス・サーク(1897-1987)にシュミットがインタビューしオマージュを捧げた名作だった。
 ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語、そして日本語。この映画に流れる多様な言語の共存はシュミットの生きた世界をよく示している。言語や国境を、そして現実と虚構の境をたえずすり抜けてきたシュミットは、80年代日本の映画ファンにとって特別な存在だった。当時のミニシアター・ブームやシネクラブ運動の中で、未知の多様な作家や作風が紹介されていった時代のシンボルでありアイドルにほかならなかったからだ。
 スイス東部の山の保養地フリムス=ヴァルトハウスのホテル・シュヴァイツァーホフ(いまもシュミット家の経営で現存)に生まれ、60年代ベルリンの解放感や政治運動に触れて大学を中退し開校まもない映画アカデミーへ進み、鬼才ファスビンダー(1945-82)やアンダーグラウンド映画のヴェルナー・シュレーター(1945-2010)らと親交を結んで特異な作家性を開花(その典型があの『ラ・パロマ』だ)、70年代半ばからはパリに在住し国際的に活躍。劇映画でもドキュメンタリーでも独特の虚構性と幻想性で人を酔わせ、オペラ演出からシュミット映画の女神イングリット・カーフェンのリサイタルまで手がけた。90年の喉頭ガン手術後、声が出にくくなったが、彼の原点であるホテルの幼年期を回想した『季節のはざまで』(92,原題「シーズンオフ」)以降10数年も映画や舞台に取り組んだ。なかでも忘れがたいのが日本で撮影したシュミットの日本論というべき『書かれた顔』(95)だ。
 玉三郎や大野一雄のつかの間の一瞬の美を見事に捉えたのはレナート・ベルタ(1945-)だった。この映画の中でシュミットの代弁者としてその希有な才能を語るベルタはシュミット映画に不可欠の撮影者だったが、ほかにもゴダール、ストローブ=ユイレ、アモス・ギタイ、オリヴェイラ等の撮影でも知られる撮影監督である。
 ほかにも、初めて見るシュミットの学生時代の作品『ミリアム』(67)から未完の遺作『ポルトヴェロ』(05)まで、貴重な撮影風景や記録映像をまじえてシュミットの多面性と一貫性をこの映画は見事に描き出す。これまで見落とされた視点や知られざる事柄も少なくない。シュミット初期作品や『天使の影』(76,ファスビンダー脚本・主演)『ベレジーナ』(99)に含まれる政治的隠喩、友人のビュル・オジエや蓮實重彦が指摘する「山の人」の側面、W・シュレーターとの親密さ、故郷スイスへの相反感情など、実に目が行き届いている。
 本作はまさに「ダニエル・シュミットの墓」と呼ぶべき愛に満ちた追悼作品である。

*Dacota Suite, “Waiting for the dawn to crawl through and take away your life”, 2007, glitterhouse records


■ダニエル・シュミット映画祭



■日本語字幕付き

■料金

一般=1回券1200円/5回券5000円
※5回券は「ダニエル・シュミット レトロスペクティヴ」「ダニエル・シュミットの悪夢─彼が愛した人と映画」でもご利用いただけます。

ユーロスペース/シネマヴェーラ/アテネ・フランセ文化センター会員=1回券1000円

高校生=1回券600円

■会場

オーディトリウム渋谷
東京都渋谷区円山町1-5
KINOHAUS 2F
TEL. 03-6809-0538

■主催

アテネ・フランセ文化センター
ユーロスペース